遺言がなくて困ることってありますか?

遺言がなくて困ることってありますか?

「うちは大丈夫だと思っていました」
ケースはいろいろですが、相続のご相談でよく耳にする言葉です。


今回は、遺言がなかったことで、家族が困ってしまった実例をいくつかご紹介します。
どれも、特別な家庭の話ではありません。



実例① 仲の良かった兄弟が、話せなくなったケース


お母様に続いてお父様が亡くなり、相続人は兄弟3人。
生前は、年に何度も集まるような、仲の良い家族とお聞きしました。


財産の中心は、両親が住んでいた実家の土地と建物で、現金はそれほど多くありません。


遺言がなかったため、「誰が実家を相続するのか」を兄弟で話し合うことになりました。


長男:「自分は住んでいないけど、長男だから」
次男:「親の介護をしてきたのは自分だ」
三男:「公平に分けるべきでは」


誰の意見も、間違っているわけではありません。
しかし、話し合いはまとまらず、時間だけが過ぎていきました。


結果として、「相続手続きが何年も進まない」「兄弟同士が連絡を取らなくなった」という状態になってしまいました。


「親が一言、決めてくれていればなあ…」
ご兄弟みなさんはおそらく心の中でそのように思われていたのではないでしょうか。



実例② 相続手続きが止まり、生活に支障が出たケース


奥様と子ども2人が相続人のご家庭です。
亡くなった旦那様名義の銀行口座が複数ありましたが、遺言はありませんでした。


相続手続きを進めるには、相続人全員の同意と書類が必要です。
ところが、「子どもの一人が遠方に住んでいる」「働き盛りで忙しく、連絡がつきにくい」といった事情から、書類がなかなかそろいません。


その間も、公共料金の引き落としや固定資産税の支払いは続きます。


「お金はあるのに、使えない」
という状況に、残された配偶者は強い不安を感じていました。


もし適切な内容の遺言があれば、最低限の手続きをスムーズに進められた可能性が高いケースでした。



実例③ 「聞いていなかった」ことで不満が残ったケース


相続人は、奥様と子ども1人。
一見すると、相続でもめにくい構成です。


しかし、亡くなった方には、生前、とても大切にしていた人、長年お世話になった知人がいました。


「何か残してあげたいと思っていたらしい」という話は、あとから家族が知ることになります。
ただ、遺言がなかったため、その想いを形にすることはできませんでした。


結果として、
・家族の中に「これで良かったのか」という気持ちが残る
・故人の本心が分からないまま相続が終わる
という、心の整理がつかない相続になってしまいました。



共通して言えること


これらの実例に共通しているのは、誰かが悪かったわけではないという点です。
・家族仲が悪かったわけでもない
・特別な事情があったわけでもない
それでも、遺言がなかったことで、
・判断を家族が背負うことになった
・気持ちの行き違いが生まれた
・手続きが想像以上に大変だった
という結果につながっています。



遺言は「家族への最後の配慮」


遺言があると、
・誰が決めたのか
・どうしてそうしたのか
が、はっきりします。


それは、家族が迷わず、悩まずに済むということでもあります。


遺言は、財産をどう分けるか、だけのものではありません。
「家族に困ってほしくない」というその気持ちを、形にするためのものです。



まとめ


遺言がなくて困るのは、亡くなったご本人ではなく、残されたご家族です。


「まだ元気だから」
「うちは大丈夫だから」


そう思っている今だからこそ、一度だけ、考えてみてください。
「自分がいなくなったあと、家族は迷わずに済むだろうか」


そんな問いが、家族のこれからを考えるきっかけになれば幸いです。


大阪の行政書士寺西事務所